値下げ競争から抜け出そうとした便利屋さんの話

便利屋は値下げ競争に巻き込まれやすい?

便利屋は低価格帯になりやすい商売です。

原因はさまざまですが、大本はサービス提供側にあります。
便利屋を運営している事業者にあるのです。

それは自分のサービスがその他大勢と同じ粗悪なサービスと思っているため。
そして、売り手自身が自分のサービスを、
「その他大勢に埋没して当然のサービス」と無意識に思い込んでいるのが原因です。

もちろん。これらは受け売りです。

ですが、私は書籍で学び、そして実地で学びました。
実際に相場より高めでサービスも売ってきました。

いわゆる価格戦略ですね。

この価格戦略を勘違いして「値下げ合戦の戦場」に飛び込んでしまうと
かならず疲弊し、ジリ貧に陥ります。

「事務所の電話が鳴らない日はない」
「毎日仕事をしているのにいっこうにお金が貯まらない」
と、嘆く便利屋事業主はごまんと存在しているでしょう。
他業種でもよくあるパターンのひとつです。

価格戦略の有効さにいちはやく気づいたのであれば
いちはやく取り入れなくてはなりません。

「あとでいいや」と、「いつか」に持ち越すと同業他社に抜かれます。
市場を持っていかれます。

そして、価格戦略には「耐える期間」が必要だからです。
何に耐えるのか?
プレッシャーです。

お客さんの数が減って動揺すると失敗します。

AさんとBさん

とある便利屋の話をします。

あくまでも架空のはなしです。
ですが、実在の人物をモデルにしたストーリーとなります。

登場人物はふたり。

AさんとBさん。

どちらも便利屋をはじめたばかり。

何の知識もないので商圏を自宅の周辺と設定してしまいました。

そのため、競合がひしめく都市部で勝負するはめに陥ります。

どうすればよいのか考えたあげく、
AさんBさんのどちらも低価格路線で運営してくことに決めました。

23区内であれば出張費は無料。夜間も対応。

「同業他社より安ければご相談ください」とのうたい文句で
チラシを撒き、自社ウェブサイトにも格安を前面とした文章を掲載。

料金表を見ると相場より明らかに安い。

格安路線が功をなしたのか電話は鳴り止みません。

依頼が入らない日はない。

AさんとBさんはその他大勢の競合から抜け出したのです。

「格安で仕事を請け負う便利屋」と認知されることによって。

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それからといもの、AさんBさんには忙しい日々が待ち受けていました。

最初のうちはほどよい疲弊感でやりきった感がありました。

ただ、日に日に体力・気力ともに落ちていきます。

お客さんのあいだを行ったり来たり。
町を駆けずりまわっても手元に残る金銭はほとんどない。

自分が感じる疲弊感と報酬がつりあっていない。

「このままではやっていけない!」
そう感じたAさんは価格帯を相場に戻すところどころか、
相場より高めに設定してしまったのです。

もとより数多くの依頼をこなしてきたAさん。
技量では同業他社に負けはしません。

しかし、開業当初からの顧客は受け入れられません。

一部の顧客は同業他社に流れてしまいました。

それどころか、依頼数は激減。

目に見えてお客さんが減少。

1日に2~3は必ずあった見積もり依頼ですらなくなってしまった。

急に低価格路線をやめたので、以前配ったチラシを見て
連絡してきた人(見込み客)に対して説明もしなければなりません。

継続的にあった仕事が急に途切れ、
顧客や見込み客への事情説明にも辟易し、
便利屋を廃業することさえ考えました。

Bさんも高価格路線へ

一方、Bさん。

BさんもAさんと同様、価格戦略に踏み切りました。

しかし、BさんはAさんより思い切りが良くありません。
自社サイトの「料金表の数字を変更」するだけでも
決心してから1ヶ月以上もかかってしまったのです。

やはりBさんもAさんと似たような状況に立たされてしまいました。
顧客からのクレーム、反発・仕事の激減。

便利屋サービスも相場より高い料金で運営しているため、
口コミサイトには「xxってボッタクリ?詐欺なの?」なんて書き込まれる始末。

近隣の同業他社(競合)からもほぼ名指しも同然の非難を受けてしまいます。
「便利屋さんのなかには不当に料金を吊り上げている詐欺業者もいますからね」と。

結果、Bさんは精神的にやられてしまいました。

身体的にではありません。

低価格路線で運営していた頃と違って今では時間に余裕があります。
身体的な負担は軽くなったと言えます。

ですが、精神面では以前より負担が増えた。

精神にダメージがあると必然的に身体にも影響が現れます。

Bさんは考えます。

「やはり、いちど設定した料金(価格)を変えてはいけなかったんだ」
「自分のサービスは料金に見合っていない」

そこで料金を以前とおなじ相場以下に戻しました。

すると効果は即あらわれます。

受注数は増加。
離れていったお客さんも戻ってきました。
事情を説明する手間も発生しません。

値上げにあれだけ抵抗し、渋い顔を見せていた元顧客も
とても良い笑顔で出迎えてくれたのです。

低価格路線に戻した途端、戻ってきた顧客はBさんに諭すように語りかけます。
まるで言いつけを守らなかった子供をあやすよう母親のように。

「ほ~ら、言ったとおりじゃないか。便利屋はこの料金でないと
やっていけないんだよ。今はどこも値下げ競争でしのぎを削っているんだから。
あんただけ相場より高くするってのは不当だっていったでしょ?」

Bさんはハッっとします。

「自分はお客さんに寄り添っていなかったんだ」
「独りよがりだったんだ」

と。

それからというものBさんは働きに働き、体を壊し、
便利屋を廃業するに至ります。

では、Aさんはどうなったのか?

「安い業者」から抜け出したAさん

Aさんは今も便利屋を続けています。

Aさんの便利屋は当初の低価格路線から脱却。

手を広げている分野では「高料金」の便利屋として
知られる存在となりました。

そのため、低価格を求めるお客さんは寄り付きません。
毎月の依頼数は低価格路線の半分以下になっています。

しかし、Aさんのサービスの質は同業他社よりも上なため、
数は少なくとも良質なサービスをもとめるお客さんが
ひっきりなしにAさんの元を訪れます。

結果、以前より少ない作業量で売り上げを伸ばすことに成功しましたとさ。

めでたしめでたし。

AさんとBさんは同じスタートラインに着いていた

以上に紹介したAさんBさんの便利屋としての技量は同程度です。

年齢もほぼ同じ。資金力だって似たようなものです。

資本はどちらも自分の身体だけ。

それでも差が大きく広がってしまいました。

要因は何なのか?

まず、Aさんは低価格路線から、「低料金の便利屋」という
みずから貼り付けたレッテルを剥ぎ取る努力をしました。

Bさんも同じ…ではありません。

たしかにBさんも低価格路線を捨て去ろうと一時は努力をしました。

けれど、周囲の圧力・自分の思い込みに屈して「低価格路線という安心」を
選びとってしまったのです。

Bさんはどこかで「自分が提供するサービスはこの程度の価値しかない
と思っていたはずです。

本当はそうではないのに。思い込みの力が負の方向へ働いてしまいました。

お客さんは良い意味での「サービスと料金が釣り合っていない点」を
わざわざ指摘なんかしません。

1,000円で買える商品を「5,000円でも私は買いますよ」と、
売手に伝える誠実な方は居ません。

たとえ売り手が潰えてもまた別の売り手があらわれると
思い込んでいます。

売り手の心底からの好意により、赤字ぎりぎりで商品を
差し出していたとしてもお客(消費者)さんは
「赤字ぎりぎりは嘘」であると思ってしまいます。

そして体力・資金がなくなり売り手が廃業すると
「経営が下手だったんだぁ」で終わりです。
それまでです。

「なぜ、安く商品を買えているのか」
「なぜ、相場よりも低くサービスを提供できているのか」
なんて考えません。

「安ければ買う」と、短期的に物事を考えてしまうのは致し方ないことでしょう。

Bさんはただ単に高価格路線を「やり切る」ことができなかっただけです。
Aさんとおなじ成功をつかめていたはずです。

しかし、Bさんの地点に立てない方だって大勢存在します。

いちど設定してしまった料金設定を変更するのはかなりの
精神的負担・不可が圧し掛かってくるのが理由です。

価格戦略に必要なのは「忍耐」です。

既存のお客さん・利用者の反発もあります。、
高価格路線へと舵をとると、「そこ」を競合他社に
突かれて遠まわしな非難もされるでしょう。

「お客様に優しくない便利屋が同地域に居ます」
「相場以上の料金をとる便利屋は詐欺ですから」
なんてね。まぁ、よくあることです。

価格戦略に必要なのは「忍耐」であり、
自分の思い込みを払拭する力。

自分のサービス(商品)の価値を見極めて
自信を持って売り出す勇気です。

正当な料金であれば勇気を持つ必要はありません。
ただ、最初は誰でも怖いものです。

思い切ってはじめるのが一番でしょう。

あなたの価値は安いのか?

「俺はこんなに安売りするほどの人間じゃない!」と、心のどこかで
思っていたならばその料金・価格は適正ではありません。
相場どおりであってもです。