便利屋を運営して頭を悩ますのが「拘束」時間に対しての処理です。
拘束時間に対する料金の措置ですね。
依頼者の都合でスタッフが何もしない。何もできない時間の
作業費を補うための料金です。時間で料金が発生する依頼には徴収しません。
拘束費については、事前に明確な方針を決めておかないと、
運営に支障をきたす恐れがあります。
とくに、注意を払いたいのは精神的な疲弊です。
便利屋運営のモチベーションに関わりますからね。
気分が滅入るとやる気がでずに、何事もできなくなります。
自営業(個人事業主)はうつになりやすい。
精神面での疲弊はできるだけ避けるのが肝心。
便利屋業を長くつづけるためにも精神面のコントロールは重要です。
では、どうすればいいのか?
最初にルールを決めておくことです。
そして、自身の私情(感情)を入れずにそのルールを遵守する。
私も便利屋開業当初はルールをつくらず、フラフラと
その場のなりいきで決断してきました。
そのテキトーさゆえにトラブルが生じたこともあります。
「でも、面倒なルールはつくれないし。おぼえられない」
いやいや。
とっても簡単です。
さきに料金のモデルケースをつくっておき、潜在顧客に
提示しておけば手間はいりません。
チラシは紙面スペースが限られるので、
小冊子かサイト(ホームページ)に記載してください。
そうすれば頭を悩ますことのなくなります。
拘束費とは?
再度、説明します。
拘束費とはあなたやスタッフの待機時間にかかる費用です。待機料金ですね。
便利屋において、拘束費が発生するのは
「人員の待機時間」と「遠方への移動にかかる時間」です。
どの程度であれば、拘束費は発生しないのか、
事前に明確に決めておいてください。
30分刻みや、1時間ごとに発生するのが一般的ですね。
規定の時間より数分超過した、というときに
依頼者から料金をいくら徴収するのかも決めておかないと
あとあと問題になります。
10分程度ですから超過分は無料でいいですよ」
ひとり親方ならぬ、「ひとり便利屋さん」であれば気軽にこのように言えるでしょう。
あなたの好き勝手にできますから。
ですが、アルバイトや登録スタッフを運用・管理する段階に進むと
明確にルールを決め、遵守させるようにしておかないと
対人上のトラブルが発生しやすくなります。
「依頼者とあなた」ではなく「あなたとアルバイト・登録スタッフ」との
トラブルです。
なお、待機状態における料金は通常の「人員1名・1時間あたりの作業費」
よりも低い設定となるのが常です。
作業費が1時間 3,000円だとすれば、半額の1,500円。
または1,000円とします。
なぜかかというと、お客さんが納得しないためです。
あなたの都合は関係ありません。
作業員をその場に居させるだけでも費用が発生しているとは
考えないためです。
お客さんは事業主(あなた)視点では考えません。
考えなくていいんです。
たとえば、同行・付き添い依頼では対象者の見守りが
含まれているのに、依頼者からは「なにもしていない」と思われがちです。
便利屋を頻繁に利用する方は理解していますが、
初回の方に納得してもらうのはむずかしい。
なので、本来は作業といっても良い状況であっても
拘束費の金額だけで請求する場面もあります。
便利屋側がすこしボランティアをするイメージですね。
待機、というよりは見守りが含まれています。
それでもはたから見れば「何もしてない」とされてしまいます。
お年寄りの「見守り」が発生する状態であったとしても、
待機状態とみられてしまうケースは結構あります。
実際は、作業であってもお客さんから見れば「遊んでいる」「待機している」と
みなされるのです。
料金のモデルケースを設定しておくメリット
拘束費を含めた、料金のモデルケースを表記しておきたところ。
なぜなら、複数のメリットを享受できるためです。
まずひとつは、正確に料金を徴収できる点ですね。
ふざけてませんよ。
以下に説明します。
便利屋の料金設定はあなたがするべき重大な仕事です。
でも、料金設定をした当人が忘れることだってあるのです。
間抜けみたいに聞こえますが、本当です。
便利屋であれば、ついで仕事が発生する機会もあるはず。
その流れで別の通常作業を1時間追加された。
そのときになって記憶があやふやだと、料金を多く徴収するおそれがあります。
本来取れるべき料金をとりこぼす(少なめに請求する)場面もあるかもしれません。
でも、ある程度のモデルケースを設定することで対策が可能です。
もし、自身の記憶やその場のきまぐれで料金システムを変えると
トラブルになるでしょう。
または現場で自社サイトの「料金表ページ」を見て確認するはめになります。
もうひとつのメリットはクレーム発生率を低下させられる点。
料金設定・モデルケースが定まっていないで、料金を請求・見積もりを
とっていくと以下のような言葉を投げかけられるでしょう。
派遣場所・実行時間・派遣人員・作業内容・必要機器・対象物の状態などにより、
料金は変動します。
依頼者のほうが間違っている・記憶違いをしている可能性は十分にあります。
でも、あなたが手違いをおこしてしまった可能性もあるのです。
「あそこは人を見て、料金をコロコロ変える悪徳便利屋だ」
なんてネットで書き込みをされたら、たまったものではありません。
実際に私もそういう目に遭ってきましたし、同業他社から
妨害をされた経験もあります。
3つめは、無駄な交渉を避けられるメリットです。
便利屋は足元を見られがちです。
専門性が低い・安さを売りにしていると勘違いされやすいためです。
そのために値切りをしてくる方が多い傾向にあります。
日々、勉強をしているのに値切りをされたら利益はほとんどありませんよね。
また、そのような値切り交渉も面倒です。
なにより、交渉自体に費用はすでに発生しています。
もし、そのような相手があらわれたら
モデルケース・料金が表記されているチラシ・小冊子・ウェブサイトの
料金表ページの確認を促すだけで済みます。
開業初期であれば、値切り客が来ないような施策はむずかしいです。
舐められます。
その値切り客が今後に顧客になるのかどうかを見極めて
交渉をする知識・テクニックも身についていないはず。
「いままでこの料金・モデルケースでやってきましたので」と、
相手に提示・納得させるためにも事前に設定しておくのが肝心です。
極限まで値切って単発依頼だけするお客さんもいますからね。
悪そうな縁はスパッと断ち切っておくべきです。
拘束費を説明すると嫌な顔をされるのが普通
拘束費をお客さんに説明すると良い顔をされません。
事情を説明しても「え、なんで(料金)をとるの!?」と、おどろかれます。
または「それだけでお金をとるの!?」と言われるでしょう。
ですが、こちらも商売です。徴収するべきところは徴収してください。
ただし、拘束費を一切とらない方針もありです。
商圏(出張範囲)外からの依頼はいっさい受け付けない。
移動に時間をとられる遠方への出張はしない。
そうすれば、拘束費を徴収しないでも赤字にはならない体制が整えられます。
結果的に、精神的に楽に運営ができます。
毎回毎回、依頼ごとに細かに計算していくと手間ですからね。
無駄に時間を消費します。運営が滞りがちになるはず。
気が良くて、真面目な方がしがちです。
こういう人は、できるだけ依頼者に請求する料金をおさえようと、
依頼ごとに緻密に計算をする。
そして見積もりを出したら「え、そんな安くていいの?」との反応が
あったりするものです。
でも、運営が滞るのでそれほど思ったより儲からなくなっていきます。
出張費とは?
便利屋においての出張費(出張料金)の定義はあやふやです。
ある便利屋は交通費を出張費と呼び、
べつの便利屋は拘束費を出張費と呼びます。
また、人員1名あたりの基本料金(作業費)と交通費をあわせた
ものを出張費と呼ぶ便利屋もいます。
なんでこのような状況になっているのか?
それは個々人の料金システムの違いでしかありません。
また、主なサービスの違いも含まれるでしょう。
ですが、便利屋のやるせない内情も影響をあたえているのです。
言い方をかえるだけで納得してもらえることもある
お客さん(依頼者)は、作業員の待機時間をなにもしていない時間と捉えがちです。
依頼者の都合で待機せざるを得ない状況であっても、です。
便利屋からすればスタッフを派遣しているのですから
何もしていなくとも料金が発生するのは当然と考えます。
でも、依頼者が注目するのは作業面。
「なにをしてくれたのか」を重視します。
また、正式な依頼をしておらず、「見込み客状態」である人も
同様の感覚をもっています。
振り回されることだってあるでしょう。
「振り回されるって? え?どういうこと?」
戸惑っておられる方のために、参考例を以下に紹介させていただきます。
あくまでも架空の話です。
夜、あなたが寝ようというときに電話がかかってきました。
熱心にチラシ配りをした成果でしょうか。
その連絡相手(以下、Aさん)は「とにかくウチに来て」と、住所を伝え一方的に切ってしまいました。
「なにか緊急のご用命かもしれない」
あなたは急いで依頼者のもとに駆け付けます。
Aさんの自宅に行くと、「ちょっと待ってて」とあなたに待機を命じます。
訳を聞きたいのですが依頼者に余裕はなく、聞く機会も失いました。
あなたは仕方なく作業車で待つしかありません。
変化が見られたのは1時間後。
Aさんが自宅からでてきて、あなたが乗っている車に近づき、こう言いました。
「もう、問題は解決したので帰っていいですよ」
あなたは料金の説明をはじめます。
「1時間ですので3千円になります。夜間の割増分と交通費はサービスしますね」
優しいですね。
事前の料金説明もできなかった点を考慮して、
基本料金だけを請求したのですから。
※依頼者にも非があったにしても
でも、Aさんは腑に落ちません。
「なにもしていないのに料金をとるっていうのか?」
押し問答をするにしては気力もなく、眠気も襲い掛かってきます。
面倒ごとは避けたいあなたは、引き下がります。
「じゃぁ、今回は無料ということで」
以上です。
「夜間に呼び出されて現地にいったのだから料金は請求するべきだ」
など、意見はわかれるはず。
ただ、表現上の違いで以上のような面倒を避けられるときもあります。
そのまま拘束費・待機料金などと言ってしまうと、見積もりの段階で
断られたり、料金徴収の際にトラブルになりやすい。
そのため、言葉のうえでは「出張費」と称する場合があるのです。
買い物代行サービスだと、拘束費と作業費が同一であったり、
別物としてあつかっている便利屋にわかれます。
どのような表記で説明するのかはあなた次第です。
ただ、重要なのは表記の仕方ではなく、お客さんに納得してもらうことです。
「待機料金」と説明したときよりも「拘束費」と説明したら
受注率があがった。このような事例もあります。
どのように表現すればウけが良いのか。
それを探るのも事業者であるあなたの仕事です。
なお、以上のAさんの例だと、現実的には作業費の半額程度を
徴収するのが落としどころでしょうね。
モデルケース例
拘束費・待機料金など、作業外に発生する費用については
事前に明確にウェブサイトやチラシに表記しておいてください。
口頭だけで伝えて、ほかに証明するものがないと値切られたり、
「そんなの聞いてない」と支払いを拒否されるおそれがあります。
以下はよくあるモデルケースの例です。
どのような場面で拘束費が発生するのかを料金表ページに掲載してください。
Aは基本料金を指します。便利屋によっては基本料金を
「出張費」「作業費」と呼称しています。
Aを徴収しないと元も子もない核となる部分にあたります。
モデルケースは「出張範囲」を元に作成する方法。
「よくある依頼事例」を元に作成する方法があります。
とりえずは、基本料金(A)と交通費(B)とは別に拘束費が
発生する点を事前に説明しておけば間違いは起きません。
ひとこと明記しておくだけでも大丈夫です。
例)xx地区内であれば交通費はどこでも千円です。
上記のA・B・C以外の必要経費(D)・深夜、緊急対応などの割増料金(E)
が発生する依頼がある点も注意してください。
「出張料金無料範囲」をかかげている便利屋も存在します。
料金計算がわかりやすく把握できるため、問い合わせ率アップにも
貢献しているでしょう。
なお、料金のモデルケース設定には決まりがありません。
どのようなモデルケースを掲げるのかはあなた次第です。