どんな些細なことであっても。
提供するサービス以上のことを求められても。
誠意をもって接していれば必ずリピーターとなっていただけるはずです。
以上が、セミナーを主要ビジネスにしている元便利屋・講師が
となえる定番説教です。
人情派としてウケますし、消費者向けの「正論」ですからね。
ただ、この教えをまもって消えていった便利屋は数知れないでしょう。
わたしの失敗談
便利屋開業当初、私はやる気に満ち溢れていました。
どのような要望にも応えられるように
「通常はそこまでやっていない」仕事でさえ、無料で提供していたほどです。
一般的に便利屋のように「お客様が便利屋のサービスにあわせる」
形態では儲からないだろうと思っていたためです。
また、ウェブサイトにも「柔軟に対応いたします」と、うたい文句を書いて
サービス範囲ではないことだってやりとおしました。
本来であれば別料金あつかいとなったり、支払った料金分以上のことでさえも
無料で提供していたのですね。
お客様の要望は本当に些細なことでした。
ですが、お客様の要望はそれぞれ違います。
ひとりひとりの要望を聞く・叶えるということは
ひとりひとりのにこちらの都合を合わせるという事です。
ですから、サービスを提供するのに偏りが生じるのは当然。
しかし、「お客様にあわせる」のが絶対正義だと信じていた私は
自分なりに「柔軟に対応」をしてしまったいました。
ですから、同じサービスでも投入するコスト(費用)がまったく違います。
お客様によっては、かかった費用・時間を計算すると
マイナスであったときだってあります。
売る商品(サービス)には
「ここまでなら対応します。でも、ここから先は対応いたしません」
との線引きが必要不可欠だと理解していなかったのです。
とある蕎麦屋のはなし
うまく説明できなかったかもしれません。
そこで、私が体験した例を紹介いたします。
私の家の近所には蕎麦屋があります。
お昼時になると、サラリーマンが工事現場で勤める男性客で満席状態。
そこで、わたしは昼過ぎに食べにでかけました。
2時3時ごろになると客層は変わります。
店内には暇をもてあました年配の方々が数人いる程度。
店内は空いているのですぐに、店員さんが寄ってきてくれました。
掛け蕎麦を頼むとすぐにでてきたほどです。
蕎麦を食べ終わって室内にかけてあるメニューを何気なしみると、
てんぷら蕎麦が目に付きました。
「あー揚げ物が食べたい。でも、もう一杯食べるほどお腹に余裕はない」
そう感じた私は店員さんを呼びとめ声をたずねました。
「揚げ物だけ頼めますか?」
すると店員さんは間髪いれずに、
「すみません。単品提供はしていないんですよ」と応えます。
私は再度、店内に設置されているメニューをくまなくみて、
「なるほど仕方がないな」と納得しました。
しかし、短気な方や察することができない方は怒るかもしれません。
「店は混んでいるわけじゃないのに、そんな手間さえ嫌うのか」
「お金は払うのだからいいだろう」
「サービスがわるい店だ」
などど。
これはあくまでお客視点の意見です。
売り手の事情を汲み取った言葉ではありません。
蕎麦屋としては、正当にサービスを提供しただけにすみませんよね。
けれど、「柔軟な対応ができない蕎麦屋」だと感じてしまう人もいるでしょう。
ですが、そのような「柔軟な対応を求めるお客」はこの蕎麦屋は切っています。
必要ないのです。
細かい点まで要望を満たしてくれるサービスを求めるのであれば
他所へいってくれ、ということでしょう。
なぜなら、この蕎麦屋にとっては「単品提供する」行為は
利益が確保できない作業となっているためです。
たとえ話ですが、私が望んだ「揚げ物の単品提供」を「柔軟な対応」と呼んでみます。
蕎麦屋(売り手)の事情を考えると、以下の不等式となるのです。
柔軟な対応をしない>柔軟な対応をする
単品提供をしない>単品提供する
単品注文ですから、一時的には利益が確保できます。
しかし、通常メニュー(通常サービス)ではないので
長い目でみれば単品提供(オリジナルオーダー)をすると、
損となってしまうのですね。
単品商品としてメニューに掲載していないのであれば、
単品として提供するためのルーチンワークが整備されていないためです。
整備されていない作業(サービス外の対応)をするのであれば、
余計なコストが発生します。
お客である私視点での話しなので注意してください。
私の視点では蕎麦屋の店員が単品提供してくれることが「柔軟な対応」と考えます。
しかし、蕎麦屋の店員にしてみれば「トータルでは利益にならないマイナスの作業」なんです。
その都度、細かい注文に応えていてはトータルでは損となるのです。
通常のワークフローから逸脱している作業であるためです。
たった、数百円の利益のために、千円、2千円、それにつづく5千円を
捨てることにもつながります。
なにより、単品を頼むお客さんが多ければ単品メニューがあるはずです。
定番メニューとなっているはずでした。
しかし、ないということはそれほど単品を望むお客さんはいないと判断できます。
見る人によっては蕎麦屋の行為は認められないかもしれません。
「単品提供を求めるお客さんがいるのであれば、要望を聞いてあげるべきだ。
たいした手間はかからないし、満足したお客さんはリピーターになってくれる
可能性だってあるのに」と。
ですが、蕎麦屋からしてみればそこまでの要望は聞く必要はないです。
そこまでの「わがままな客」の要望を満たすよりも、通常の、普通の「お客様」を
相手にしていたほうがずっと手間がかかりません。
すでにあなたが何かしら商売をしているのであれば理解しているはずです。
そうです。「お客様はわがまま」なんです。
そして、私たちも「お客様」になると急にわがままとなる生き物です。
サービス外の事は徹底して「しない」
提供するサービスを設定・つくった場合には、
そのサービスのルールを守らなければいけません。
お客さんも、売り手のあなたでさえも。
ひとりひとりのお客さんに合わせた行為、
「柔軟に対応する」というのは聞こえが良いですが、
柔軟に対応するあなたにも負担が圧し掛かることも意味しています。
サービスはパッケージとして販売しています。
サービス範囲外の事情にまでフォローすると手がまわりません。
そして、お客様によって利益が断然に異なる場合もあるでしょう。
提供するのがおなじサービスであったとしても。
すべてのお客さんの要望に答えない
すべてのお客さんに応える必要はありません。
極論を申せば、「わがままなお客さんはいらない」ということ。
あなたはお客様の力になりたいのは理解しています。
しかし、お客様の事情・求める声に合わせすぎると疲弊します。
費やした労力の見返りがすくないケースがほどんどを占めるでしょう。
以上の話が飲み込めない方は、便利屋という商売に囚われすぎていると思います。
スーツ(服)の販売でもそうですが、オリジナルオーダーは高額になりますよね?
廉価で提供するためにはサイズ・規定を設けて売り出すしかありません。
だからこそ、「このサイズの服を着れば身体に合うかもしれない」との
目安としてS, M, L, LL(XL)とのサイズ(号数)が設けられているのです。
自分の身体にぴったり合う服を求めるのであれば、
オーダーメイドをするしかないでしょう。
それなのに、提供するサービスが物品ではない業種だと
売り手のほうからお客さんの都合に合わせてしまいがちです。
お客さんが既製品(通常)の料金で依頼をしたのに、
いつのまにか独自注文依頼となってしまう展開はよくあることです。
この事態を防ぐためにも線引きが必要なんですね。
「このサービスはここまでしか対応できかねます」と。
しかし、なかなかできません。
「断ってしまうと逃げられてしまうかもしれない」
「断ってしまうとリピーターになってくれないかもしれない」
「もし、断ったら口コミさいとで悪評を書かれるかもしれない」
不安を抱いてしまうためです。
ですが、ここできっぱり断れないと、
利益がほとんど得られない仕事をする羽目になります。
利益のでない無駄な作業を請け負うことになりかねません。
断れずに、お客のわがままに屈してただ働きをする方はごまんといます。
「売り上げを伸ばすため、どんな些細なことでもお客様の要望は
必ず叶える」なんて目標はやめるべきです。
気力・体力・時間をいつもより消費するだけですから。
我侭なお客は切り捨てる
売り手側(あなた)が、定めたサービスの範囲外のことまで
求める方は捨ててしまっても問題はありません。
特定の方がお客さんになってくれさえすれば良いのです。
誰も彼の望みも応えることができるのは全国区の大手だけです。
自営業のあなたは千差万別・十人十色の要望をカバーする力はないはず。
「大衆」は大手に任せれば良いんです。
あなたはあなたの支持者の要望を応えるだけ。
それだけで売り上げは伸びます。
たぶん、いや、きっとあなたが提供するサービスの範囲を逸脱して
求めるお客様は必ず現われます。
そのとき、どう対応するのか決めるのはあなたです。
なお、「わがままなお客さん」は見積もり時点・相談段階である
程度ふるいわけできるはずです。
けれどこのふるいわけの時点でさえあなたは手を動かし、
時間を消費しているはずですよね。
と、いうことはすでに費用が発生しています。
我侭なお客・見込み客によってあなたの貴重な時間が奪われているのです。
事前にそのような困ったお客さんがあなたの元に集う前に、
対策を講じなければならないでしょう。
ウェブサイトに注意書きをするのもひとつの手ではあります。
まとめ
お客様から見れば、些細な要望だったとしても売り手側にとっては
手間隙がかかるなんてことはざらにあります。
無駄に疲弊をしないために、そしてお客様に振り回されないためにも
「このサービスはここまで」との、線引き(ルール)を明確にしておく
必要があります。
ちなみに、このルールを破るのはお客様ではありません。
サービスを提供する側である「あなた」です。
ご注意ください。