目次
集客できても成約できないときに使えるリスク・リバーサル
開業初期、成約率に悩んでいるときは
「返金保証制」「成功報酬制」の導入を検討してください。
一気に成約率が上がるかもしれません。
開業初期はしんどい ※前置き
どの業種においても起業初期はしんどいものです。
何がしんどいかと言われれば誰もが通る道である「集客」です。
そして集客したあとの一押し。成約でしょう。
社員時代にはあり得なかった「仕事をしたくても仕事がない」という状況に陥るのです。
すでに用意されている仕事をこなすのではなく、まずは仕事を獲得しなければならない。
仕事を獲ってくるのが仕事。個人の便利屋であれば営業マンは自分自身。
ほぼ何もしなくても仕事が舞い込んでくる状態、いわゆる軌道に乗るまでの辛抱。
とはいっても便利屋を続ける以上、集客面の施策はずっと続けなければいけません。
ですが、この軌道に乗るというところまで
歩を進められるのは全体からしてみれば一握り。
いざ便利屋を開業しても、仕事が得られず、
便利屋事業から撤退していった方もすくなくありません。
いつのまにか更新が止まった便利屋のホームページもいまだに見かけるほど。
それだけ開業初期は辛抱の時期です。
仕事がなければ次の段階に進めない。
なので、集客・成約率のアップが至上命題となります。
でも、便利屋は同業他社はもちろん、専門業種とも比べられやすい業種。
明確な差別化ができていないと、すぐに同業他社のなかに埋もれてしまうでしょう。
「ではどうすれば良いのか?」
この模索も便利屋オーナーである貴方の仕事です。
しかし、上手く差別化できない方もすくなくありません。
いや、差別化できない便利屋さんのほうが圧倒的に多いはず。
「自分ではこれで差別化できている」とおもっていても、
お客さん視点ではまったく違かったりもします。
難しいので今回は差別化については深掘りしません。
ただ、どうしても差別化ができない方に向けてひとつ秘策をお教えします。
秘策というほどではないですが実践できている人は本当にすくない。
本音を言うと私もしたくありません。
ですが、便利屋開業初期の「仕事がない時期」を乗り越える方法としては効果的です。
なお、以降はある程度の集客はできているという前提のもと話しますのでご了承ください。
リスク・リバーサルを開業初期の差別化にする
これといって特技がなくてもはじめられるのが便利屋という業種の強み。
ただし、個々の便利屋としての強みは別。
最初から同業他社とは圧倒的な違いを見せつける「何か」をもっている便利屋はまれです。
資金も乏しくコネもない。なんとか便利屋を開業できた方にとっては厳しい。
便利屋はもちろん、他業種の経営本を見ても「差別化をはかれ」ばかり。
でも、すぐに差別化できたら苦労はしません。
しかし、ある側面では禁じての行為をすればなんちゃって差別化はできてしまいます。
それはリスク・リバーサル。
これだけでも地域単位の便利屋さんとしては差別化のひとつとなり得ます。
このリスク・リバーサルというのは簡単に説明すると「不安の肩代わり」です。
私も深く知っているわけではないので恐縮なのですが説明します。
お客さんは不安です。
便利屋という得体のしれない業者に依頼するだけでも不安でいっぱい。
おっかなびっくりの状態です。
そのような状態なのですから、実績もほとんどなくこれといって
特色もない便利屋に依頼するはずはないのです。
通常は。ただし、何かしらの差別化がはかられていけば
お客さまも「この便利屋に依頼しようかな」と心が揺れ動くはず。
その差別化がリスク・リバーサルです。
リスク・リバーサルにはいろいろ種類もあるのですが、
分かりやすいところでは「返金保証」ですね。
資金も突出した技術も実績もない開業したばかりの
便利屋さんが使えて効果的なのはほとんどこの返金保証しかないとおもっています。
※もちろん私が無知なだけで他にもあるかもしれません。
開業キャンペーン・相場破壊の低料金化は一時的なもの。差別化とは言えないでしょう。
返金保証で成約率を上げる
リスク・リバーサルを導入すると成約率をアップできる余地ができます。
あくまで余地です。
お客様の不安を肩代わりするといってもすべてが良い方向へ
動くとは限りません。だとしても有利に働く場合があるのは確かです。
では、リスク・リバーサルの基礎を理解していただいたところで
返金保証の説明にうつります。
便利屋においては返金保証はほぼ成功報酬と同義です。
以下のようなうたい文句をしている便利屋さんは、
まず、成功報酬制を導入していると思っていただいて問題ありません。
(例)「お客様の求めに応じられなければ料金はいりません」
「ご依頼に失敗したらお預かりしている料金は返金します」
また、成功報酬であれば「半成功報酬制」や「完全成功報酬制」が、
返金保証であれば「半額返金」「全額返金」「基本料金返金」が存在します。
さらに、サービス限定の返金保証なんてのもあります。
「半成功報酬制」は、条件付きの成功報酬制。
一定の条件を満たせば半額分は料金を確保できる制度。
「半額返金保証」とほぼ同じ意味で使われます。
「完全成功報酬制」はその名の通り、依頼が完遂できた
場合にのみ料金をいただく制度です。
もし、失敗したらお客様から預かっている料金を返金します。
「全額返金保証」とほぼ同じです。
また、返金をするのはあくまでも「基本料金」だけ。
スタッフの交通費やお客様の「振込手数料」や、
お客様が現場までにかかった交通費は補償しないのが「基本料金返金」になります。
料金体系によってもこの線引きは異なるので感覚的に捉えていただければ十分です。
どれを選択するのかは便利屋オーナーである貴方の差配。
しかし、ここで突き放してしまうとわざわざ記事を書いた意味がありません。
なので一応個人的な見解を述べます。あくまで私見です。
もし、あなたが自身の技術に自身があるならば「完全成功報酬制」がベストです。
リスク・リバーサルにおいて完全成功報酬制は効果が高い。
他業種で培った経験を便利屋に活かしている方、売り出しているサービスが
前職とほぼおなじ仕事である方などに適しています。
なぜなら、以前していた仕事を便利屋としておこなうだけです。
掲げている看板や身分(社員から自営業主・経営者など)に代わっただけですから。
ほぼ失敗はありえないでしょう。
逆に自信がない方、はじめてのサービスを提供する方は
「半成功報酬制」が適していると言えます。
または条件付きで返金保証を設けるべきです。
返金規程の設置
返金保証を打ち出す場合には必ず条件を付けてください。
無条件返金はサービス業、それも個人運営の便利屋には向いていません。
隙を見せるとどんどんつけ込まれます。
こちらが良かれとおもって提供しているサービスでも、
悪意をもって利用する人物は必ずいます。
おもわぬ被害に遭わないためにも返金規定は設けておくべきでしょう。
規程をつくるのであれば各条項(以下、条件)を考えなければいけません。
では、どのような条件にするのか? それはあなた次第。
ふざけているのではありません。
便利屋とひとくちに言っても、中身はばらばら。
取り扱っているサービスが異なるのですから条件も違ってくるのは当たり前です。
しかし、どの便利屋さんにもあてはまる共通条件は存在します。
それが「情報の秘匿・後だし」と「不測の事態」。
これらが発生し、依頼が失敗に終わったときは返金には応じないと明確に記してください。
さまざまな事情を抱えたお客様を相手にする便利屋として、
一番に困るのが情報の隠蔽・秘匿です。
誰が何を秘匿するのか?
便利屋に依頼する人(お客様)が依頼に関わる情報を隠すのですね。
依頼をするにあたって、事前に伝えておかなければ
情報を明かさないお客様も存在します。
あまり内情を知られたくない、自身の恥ずかしいところを隠しておきたい。
そういった思いから情報を秘匿するのですね。
請け負う立場である側としたらたまったものではありません。
準備が一通りおわってから必要な情報を出してくるお客様もいます。
いわゆる「情報の後だし」です。
「いまさら言われたってどうしようもない」「もっと早くいってくれれば」
落胆するのは目に見えています。
なので、以下のように明確にお客様に伝えてください。
「依頼を成功するために必要となるべき情報を提供せず、
その結果、依頼が失敗に終わったときは返金はしない」
以上。
また、「不測の事態」も条件に付けくわえるべきです。
依頼を成功させるために準備を万端にしても、予想外の出来事により
依頼が失敗するケースも当然あるでしょう。
そのようなとき、事前に取り決めておかないと、
どちらが責任を持つのかでまず揉めます。
もし、不測の事態で依頼が失敗に終わったときは、返金保証をしていても
返金には応じない。そのように規定を設けておくべきです。
無条件返金保証は便利屋に適さない
返金保証の最たるものに「無条件返金保証」があげられます。
「効果がでなかったら」「3か月継続したら」などの制約はなし。
相手が返金の申し出をしたら何も問わずに返金する制度。
あたりまえですが理由は問わずに返金します。
また、「ご満足いただけなかったら」「ご不満が残ったら」
というほぼ無条件の返金保証も存在します。
なお、化粧品・健康食品ではないのですから、便利屋には適していません。
返金保証は開業初期がやりやすい
返金保証(成功報酬制)は、開業初期こそ導入しやすい制度です。
仕事に困っていないその地域の大手は今更導入する意味が薄い。
そこそこ実績をあげている中堅便利屋も同様。
それに事業者として返金保証制度は諸刃のつるぎだと理解しているためです。
効果はある分、それだけ不利益となる場面があるのが返金保証だからです。
不利益な面とはにか?
まずは制度の維持のための労力があげられます。しかし、それは些事です。
便利屋オーナー(事業者)がなにより恐れているのは「お客様の質の低下」です。
値下げは強力な差別化です。しかし、値下げをすると一気にお客様の質が下がりますね?
それとおなじ事態に陥る可能性があるのです。
値引きほどではないにしても、影響があるのは確かでしょう。
では、お客様の質が下がるとどうなるのか? いいことはありません。
まず、クレーム・要求の増加、それらに対応するための作業量の増加。
時間がごりごり減っていきます。
以前よりも相見積もりするお客さまも増えるでしょう。
トータルで考えると、ひとつの案件で得られる利益は下がります。
値下げをしていなくとも、費やす労力が増えるので相対的に利益は低下。
忙しいけれどおもったより稼げていない状況の出来上がりです。
また、事業者が返金保証に踏み切れない大きな要因が存在します。
それが心的不安。私は個人的にこれが一番大きな要因だと考えています。
※過去の自分の経験や他便利屋さんの実態を見たうえでの判断。
返金保証は上手く使えば効果的です。
すぐに成果がでるときもあるでしょう。
ただし、便利屋にいたってはそのまま導入するのは疑問が残るところ。
なぜなら、どこからどこまで責任を持つのかがあいまいなサービス業であるため。
保証する範囲の設定がむずかしい。そして便利屋は取り扱う商品は複数。
単一サービスではないので、全サービスに適用すると
「割に合わない」サービスも生まれるでしょう。
ですが、これはあくまで「仕事がある」「顧客が付いている」便利屋さんに限ります。
開業初期で顧客が数える程度しかない。依頼なんて月に 1、2件あれば良いほう。
そのような状態であれば成功報酬制を導入するタイミングです。
理由は先に述べたように心理的ハードルによるもの。
ダメでもともとで挑戦できるのが起業したばかりの人間が持つ強みのひとつ。
まず、同業他社は対抗しようにもミート戦略はなかなか使えない。
効果があると分かっていても成功報酬に踏み切れないのですね。
頭ではわかっていても踏み出せない。こういった側面があるのです。
返金保証をやめるとき
「返金保証の便利屋だ」とのイメージが定着することによって
メリットもあればデメリットあります。
おそらく、はじめるときよりも返金保証を辞めるときが難しいでしょう。
「返金保証があるから依頼してただけ」
このような層ばかりを集めていてはジリ貧です。
返金保証を辞めたときに、そのような方たちはあなたの元を去っていくでしょう。
返金保証のやめ時は人それぞれ。ですが、基本は存在します。
※あくまで便利屋・小規模ビジネスの範囲
それは「返金保証以外の部分であなたに魅力を感じる顧客が獲得できたとき」です。
簡単に申せば「同業他社との差別化ができたとき」と言えるでしょう。
もっと深く言うのであれば、便利屋を運営できる顧客数を確保できたときです。
平均単価・リピート数を考慮し、運営費・生活費が十分にまかなえたときであれば
自信を持って返金保証を辞められるでしょう。
ただし、上記はあくまで理想です。
現実は理想通りにはいかないかもしれません。
返金制度を導入した私の経験談
「返金保証に関して御託を並べているがおまえはどーなんだ!」
「実際に返金保証を試してみたのか?」
このように疑問を持っている方もいるので私の経験談を話させてもらいます。
私もサービス単位であれば導入した経験があります。
ただ、便利屋を開業してから2、3年ほど経った頃。開業初期ではありません。
ですが、別事業(以下、事業A)であればスタートダッシュの意味合いも込め、
返金保証を導入した経験があります。
それで結果はどうなったのか?
詳しいデータは公表できません。
ただ、ウェブサイト立ち上げから 4か月ほどで ひとつきに問い合わせが
2,3ほどある状態にまで持っていけました。
「え~遅い!」「才能なさすぎ」と思われるかもしれません。
しかし、広告宣伝費を一切使っていません。SNSもツイッターだけ運用。
コンテンツ(記事)もひとりで作成。ウェブサイトも私自身で作成したものです。
※テンプレートは使用
「広告費は使っていないけれどインフルエンサーの友人にツイートしてもらった」
なんて、正確ではないけれど間違いではない情報でもないのです。
事業Aはスモールビジネスです。業界でも有名な先行業者が存在していました。
テレビにもでているほど。しかし、成功報酬制は取り入れていません。
そして2番手・3番手の業者を見ても同様です。
ちなみに事業Aは差別化ができにくいサービスを商品としています。
私(新参者)がシェアを奪うのが難しい。
そして不確定要素が多いため、成功報酬制を
取り入れるのは半ばタブーとしている業界。
ならばと開業当初から成功報酬制を導入。結果は上々。
ですが、差別化が上手くできず収益は頭打ち。
私の実力ではこれ以上の発展は見込めないと優秀な方に事業譲渡をしました。
なお、開業初期に顧客を獲得できたのは成功報酬制(返金保証)だけのおかげではありません。
ふたつめの要因としては「検索ワード」に頼る部分もありました。
業界が今だ気づいていない、金の成る黄金ワードを見つけだしたのも
上手くいった理由のひとつでしょう。
なお、この検索ワードは大手に見つかってしまいました。
SEOのガチバトルでは大手に勝てません。見つかった時点で勝負ありです。
大手「あれ、知ってはいたけれどこのワード、意外にお金にできるじゃん」
このような感じで私が発掘した黄金ワードは使用され、その業界では多用されるはめに。
結局、大手に塩を送ってしまったような結果におわりました。
なお、事業の売却益もあり、十分な黒字で終わったので損はしていません。
肝心のトラブル発生率は?
あくまで私の狭い経験の中でお話しします。
私は先に述べたように便利屋をはじめ、他事業にも返金保証を導入してきました。
はじめて導入したときは常に不安でいっぱい。
ヒアリングから準備まで、数日かかった依頼が
赤字になるなんてケースも当然ありうるため。
返金制度を利用してタダ働きさせようとする人間も実際に存在します。
はっきり言って恐れていました。
精神衛生を考慮すると辞めたほうが良いかもしれない。
しかし、結果はそれほど悪くはない。
それどころか問い合わせ~成約までの流れが以前よりもスムーズ。
詳細にデータを取っていたわけではないのですがトラブル発生率はとても低いと言えます。
大体ですが 10回に1回、トラブルになりそうなときがある程度。
返金保証・成功報酬で深刻なトラブルに陥ったケースは1件もありません。
ですが、業務が増え、心的な負担が上がったのは間違いないです。
それでも仕事がパタッと止まった時の緊急対応策としては優秀だと感じました。
私の経験談は以上です。
多くの場合、成功報酬制は諸刃の剣です。
使いどき、剣をふるう場所によっては痛手を負うでしょう。
ただ、使いようによっては効果もあるのも確かです。
人を集められているのに成約率が低い。
そのようなときには最後の一押しとして成功報酬制を打ち出すのも
戦略としては十分にありだとおもいます。