開業希望者が相談時に問う定番質問のひとつ。
「自己資金はいくらくらい持っておいたほうがいいの?」
これらの質問について、答えていきたいと思います。
自己資金は必要なのか?
「必要あるといえばあるし、ないといえばない」
簡単なようでいて難しい。明確に答えられない部類の質問です。
返答につまります。
立場によっても「自己資金は○○円必要」と申せないのが
便利屋(何でも屋)だからです。
中年女性が資本がまったくない状態から便利屋をはじめたケースもあります。
しかし、すでに夫の稼ぎがあったうえでの開業です。
何もかもがない状態からはじまったわけではありません。
スタート地点は皆さんそれぞれ違います。
高低差があるんです。
Aさんは修理業から便利屋を開業。主力サービスは出張修理と定めたとします。
道具は社員時代のものをとりあえず使えば道具代はほとんど必要ありません。
技術も習得済み。お客様も確保してからの起業ですからお金に余裕ができてから
集客に費用をかければいい。HP(ホームページ)※は友人に作ってもらったので
製作費用はゼロ円です。
※厳密には違いますが、ウェブサイトを指しています。
そして、Aさんは修理サービスから他サービスへ広げ便利屋として成功。
ここで、便利屋開業希望者のBさんがAさんに質問します。
A「自宅を事務所にしたからゼロ円。集客はチラシを撒かずともなんとかなるよ」
納得したBさんは便利屋をはじめます。しかし、意外に出費が多い。
なかなかお客さんも見つけられません。
Bさんが悪いわけでもAさんが説明下手なわけではありませんね。
Aさんは自分の立場から語っただけですから。
もし、Aさんから正確な情報を聞くには、Aさんの立ち上げ時の環境に
ついて聞いておくべきだったのです。
事実ではあるが正確ではない。
かなりよくある伝達不足の事例ですよ。
Cさんは「財布には缶ジュースも購入できる状態の小銭もなかった」状態から
便利屋を起業し、成功した方がいます。
この一文で勘違いしてしまうのですが、Cさんは貧乏だったわけではありません。
サラリーマンであり、妻子持ちです。
給料は生活費にほとんどが消えますが、奥様の実家は裕福であり、
金銭的援助を受けていました。
さらに便利屋業務で必要となる機材費用については奥様が実家経由で
援助していたらしいです。
でもCさんは恵まれた環境に気づいていないのか
「俺は自己資金なしでここまで来た」とおっしゃっています。
つまり、額面どおり情報を受け取ってはいけないのですね。
とくに起業して成功した方は自分を大きくみせたいので
低いスタート地点から今の段階に上がってきたと誇張します。
なかには本気で勘違いしている人だっているのです。
また、開業前から自分の立場を知らずにいる人もいます。
Dさんは起業時に親から起業資金として300万円受け取っているのに、
「元手なしからの起業に挑戦します」と喧伝していました。
本気で元手なしからの起業だと信じています。
どういうことか?
実態はなんのことはありません。
ただ、金銭感覚がずれていただけです。
親御さんは会社経営者であり、もとから金銭感覚が庶民とは
かけ離れていたようです。自己資本、元手の最低ラインが
1000 万ではないのかと不思議がっていたほどです。
このようなケースはなぜか○稲田出身者※1 に多く見受けられます。
注意:※1 あくまで私が見てきた範囲内でのお話です。
よくお話を聞くとなにも貧乏だったわけではないのですね。
自己資本が絶対必要なパターン
FC(フランチャイズ)に加盟する場合には必要です。
加入時の加盟料金に加え以下が必要となります。
毎月の加盟料金・販促物一式・看板(商標)使用料・研修費など。
また、ホームページ製作費などで約50~80万円ほど。
事務所を自宅にできない場合は店舗を借りるため、
どうしても開業費用が必要です。
自己資本が必要でないパターン
すでに打ち出すサービスがある程度決まっている。
そのうえでサービス提供に必要な道具一式が揃っている。
ほとんど費用がかからない形態の業務を提供する。など。
(例)並び屋・恋人代行・同行など
ちなみに私が便利屋をはじめたときは所持金 3千円ほどでした。
さらに恥ずかしながら実情を晒すと、奨学金の借金が当時で約 400 万円。
所持している銀行口座の残高合計で千円未満。
高校の学費を働いて稼いでいたほどの家庭ですから両親とも貧乏。
親戚づきあいもほぼないので援助してくれる人は皆無。
おまけに父親がギャンブルなどでつくった借金がありました。
他人の連帯保証人になっているので借金を返したとおもったら、
いつのまにか別の借金取立人がくるというありさま。
漫画みたいな話です。けど現実でした。
なけなしのおかねでドメイン代金とサーバー代金を支払い、
ウェブサイトを開設。住所は大家さんには無断で特定商取引法表示に掲載。
検索されると分かるので、画像で表示していました。
それほど追い詰められていましたのです。
1件目の依頼で利益があがったらすぐに、バーチャルオフィスを入手。
正確には住所だけ貸して貰いました。
住所を貸してもらっているだけなので、実態は事務所を自宅として兼用しています。
しかしこれ、法的にはグレーであるようです。
SOHOやネットショップを副業としている方は自宅住所ではなく、
貸し住所を特定商取引法に記載していますね。
なので完全なる合法と認められている風潮がありますが、
かなりあやしい点もあったと思います。
法律家によっても解釈は異なるので、安心を得るために、
金銭面で余裕があるかたは事務所を借りましょう。
結局、どうなのよ?
誰にでもあてはまりそうな回答としては以下になります。
便利屋開業時の自己資本はスタート時点によって違う。
すなわち人それぞれ。
請け負う仕事に特殊な機材が必要ないのであれば、
道具代金はなくても良い訳です。